御曹司の溺愛エスコート
「桜……」

「蒼真兄さまは……話を聞いてくれなかったじゃない!」


桜の狂ったように泣き叫ぶ姿を見て蒼真の心が痛む。


桜が腕を払おうと手を振り上げた時、蒼真の手の甲に爪が当たった。


「あっ! ごめんなさい!」


蒼真の大事な手に傷を作ってしまい、桜はうろたえた。
みるみるうちに瞳が涙で潤む。


「こんなの傷のうちに入らない。昨日はすまなかった。話をしよう」


蒼真の言葉に桜は力なく首を振る。


「もう嫌……」


蒼真の腕の中で暴れて疲れたのか、桜の身体の力が抜けた。
髪をゆっくり撫でられ、震えが治まりはじめた。


「桜、ソファに座りなさい」


桜は動こうとせず、返事もしなかった。


「桜?」


桜は蒼真の腕の中で意識を失っていた。



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