御曹司の溺愛エスコート
少し歩くと、駐車禁止スペースに蒼真の車と思われる白のマセラティが停めてあった。
係りの者が近くにいたので了承済みのようだ。


蒼真はリモコンでトランクを開け、手際よくスーツケースを入れる。


その動きを桜は見ないように、走り行く車を目で追っていた。


「桜」


蒼真は助手席のドアを開けると、さっさと運転席に歩いて行く。


勝手に座れということなのだろう。


桜は無言のまま助手席に座った。


蒼真は運転席につくとエンジンをかけた。


「あ……バス……」


桜はリムジンバスを待っていたのだ。今になって思いだした。


チケットが無駄になっちゃった。


ため息を吐いた桜に蒼真は無言だった。


取り付く島のない蒼真の態度に、桜は黙っていることにした。


やっぱり私は許されていないんだ……。


運転中の蒼真に話しかけることをあきらめ、車窓から3年ぶりに見る東京の町並みを見ていた。



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