御曹司の溺愛エスコート
「大学は?」

「え?」


ぼんやり外を見ていた桜は突然声をかけられ、ビクッとして蒼真の方を向いた。


「大学生だろう? どこの大学へ行ったんだ?」

「……行っていません」


桜は話題を逸らしたくて短く答える。


「え?」


今度は蒼真が聞き返した。


「書店で店員をしています」


去年、桜の面倒を見てくれていた祖母が亡くなってしまい、生活が苦しくなり働くことを選んだ。
成績は優秀だったので、奨学金をもらうことも出来たのだが桜は働くことに決めた。


蒼真は頷くと黙ってしまった。


桜は3年前の蒼真の笑顔を思い出した。


今はもう笑いかけてくれない。


蒼真兄さまは私の事を憎んでいる……。



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