御曹司の溺愛エスコート
いつの間にか車は見たことのある場所を走っていた。


長く続く白い塀は、自分を拒絶しているみたいに桜には見える。


やっぱり帰ってこなければ良かった……。


隠し切れないショックに小さくため息を吐く。


車は大きな門をくぐり秋月邸の玄関の前に着いた。


******


「お帰りなさいませ」


初老の背の高い男性が、桜側のドアを開けて深く頭を下げる。


「南条さん……お久しぶりです」


この男性は秋月家の執事で、桜が12歳の時、秋月邸に引き取られた日から優しく接してくれた人。
彼の妻もメイド頭として働いており、あの頃、桜にとってこの屋敷で蒼真の次に安らげる存在だった。


「お元気でいらっしゃいましたか? ますますお美しくなられて」


孫を見るように慈しみの表情が見て取れた。


「はい。南条さんもお元気そうで安心しました」


南条ににっこり微笑む。


「家内も首を長くして待っていますよ」

「私も早く会いたいです」


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