御曹司の溺愛エスコート
部屋に入ると、ソファに桜を座らせた。


「桜。3年前の事を話してほしい」


蒼真を見つめる桜のブルーグレーの瞳が揺れた。


あれほど誤解を解きたかった。その機会はやっと訪れたけれど、あの事を思い出すと、手が震え動揺してしまう。
会うまではあんなに聞いて欲しかったのに、今はどうでもよい心境だ。


「もういいの……」


忘れたい記憶だけれど、忘れてはいけない記憶。


「どんなことでもかまわない。話してくれないか。望に……レイプ――」

「されてない!」


桜は蒼真の言葉をさえぎった。


「良かった……全て話して欲しい」

「今さら話す事なんてない……」

「数日前は話したそうだったじゃないか」

「思い出したくなの……3年前……蒼真兄さまは冷たい目で私を見た……」

「望の死で打ちのめされていたんだ」


それはわかる……。
蒼真兄さまと望くんはとても仲の良い兄弟だったから。


「出張先のフランスから戻った時には、お前はシカゴのおばあさんの家に行ってしまっていた」

「手紙……書いたの……蒼真兄さまの机の上に……」

「手紙? 机の上に手紙を置いたのか?」


蒼真は手紙の存在を知らなかった。




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