御曹司の溺愛エスコート
部屋をめちゃくちゃに荒らされている事より、なによりも大事な物が盗まれていた事がショックだった。


ガタッと言う物音に桜の心臓が跳ね上がった。


いやっ、怖い……。


震える足を無理やり動かし、部屋から出た。
まだ部屋を荒らした犯人はこのアパートにいるかもしれないと思うと足がすくむ。


桜は勇気を振り絞ってアパートを後にした。
隣のリサの所に行くと言う事は考え付かなかった。
頭にあるのは蒼真だけだった。


辺りに気をつけながら桜は道路に出ると、唯一安心できる人の元へ走った。


ドレイク・ホテルの最上階に行く時、ホテルの従業員は桜を見て怪訝そうな顔をした。
ロビーに姿を現した少女は息を切らし、青ざめた顔で一心不乱にエレベーターを目指していたからだ。


ハーフの桜は東洋系の顔立ちなので、外国人から見たら19歳の実年齢よりもっと若く見られてしまうのだ。


蒼真兄さま……。
確か……1311号室……。


まだ震える手でドアチャイムを鳴らしても出てこなかった。


いない……。
もしかして日本へ帰ってしまった?


桜は力なくドアの前に座り込んだ。



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