御曹司の溺愛エスコート
ベッドに寝かせる前に桜は蒼真の腕の中で眠っていた。
その寝顔のあどけなさに微笑み、静かにベッドの上に降ろした。
顔にかかる髪を優しく払い、暖かい上掛けをかける。


しばらくその寝顔に見入っているとスイートルームのドアチャイムが鳴った。
ドアを開けるとコンシェルジュが立っており、大きな紙袋と箱を抱えていた。


「ご入用のものはこちらで大丈夫でしょうか。また御用の際にはいつでもお手伝いいたします」


丁寧にコンシェルジュは蒼真に言い、部屋へ運ぶ。


「ありがとう 助かったよ」


コンシェルジュが出て行くと、携帯電話を手にした。
真琴に桜が見つかったことを知らせるためだ。

『蒼真様。桜様は?』


急いで電話に出たところを見ると心配で仕方が無いらしい。


「見つかった。ホテルの私の部屋の前にいたんだ」

『ご無事でしたか?』

「あぁ。犯人とは会わなかったようだ。不幸中の幸いだ」


蒼真の声は先ほどより明るく聞こえて真琴は微笑んだ。


『良かったです』

「また連絡する」


電話を切ると、寝室へ行った。
キングサイズの大きなベッドの上に小さく丸まり、桜はぐっすり眠っていた。


雪でびしょ濡れだった桜の体調が心配で、額に触れてみたが熱は無いようだ。


桜が自ら自分の所へ来てくれたのが嬉しかった。
何が何でも桜を説得して日本へ連れて帰ろう。

< 85 / 356 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop