御曹司の溺愛エスコート

苦痛

「一緒に日本へ帰ろう」


耳元でささやかれた言葉に桜は驚いた。


「何を言ってるの……? 蒼真兄さま……」


日本に帰れるわけがない……。
あんな苦しい思いをするのは嫌だ。


「ここにいても金に困った生活だろう?」

「でも……楽しいもんっ!」


子供のように拒絶する桜に蒼真は心の中でため息を吐く。


どうにかして頑(かたく)なになってしまった桜の心を溶かさなければ。


「朝食を食べながら落ち着いて話をしよう。君が納得のいく話をしてくれれば俺は1人で日本へ帰るよ」


桜はその言葉に少し悩んでいたが頷いた。


「朝食が来るまでここで待っているんだ」


桜の頬にそっと指で触れ、蒼真はベッドルームから出て行った。


隣の部屋に入った蒼真は、床に置きっぱなしの桜の新しい洋服一式をクローゼットの中へ入れた。


着替えればまた桜は逃げるかもしれない。


蒼真は受話器を取り、ルームサービスに朝食を2人分注文した。


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