御曹司の溺愛エスコート
無理をさせたか……。


蒼真は桜をベッドルームに運んだ。


気を失った桜の顔を見つめていると後悔ばかりが心を占める。
あの時の事が心の傷となって、桜の心は固い殻にこもってしまったようだ。
なぜあの時、優しく抱きしめてやらなかったんだ……。


あの時、そっけない態度を取ってしまった。
桜の怯えた顔を思い出す。


顔にかかったライトブラウンの髪をそっと払う。
高い頬骨、大きな目、長い睫、桜色の唇。
父親がアメリカ人で母親は日本人。
ハーフの桜は人形のように可愛い。
美人というよりは可愛い部類。


もう少し経てば美人になるだろう。


秋月家に来た桜は当時12歳で、初めて会った時はフランス人形が歩いていると思ってしまったほどだった。


今は肩までの髪の長さだが、昔は腰まで長い髪。


愛らしい桜は使用人たちにも愛されていたが、秋月夫人と蒼真の妹、琴美には嫌われていた。


居候の身である桜は、大人しく迷惑をかけないように暮らしていた。


あの頃は留学から帰ったばかりで、研修やオペなどでなかなか屋敷に戻れなかった。
時々、疲れて帰ると桜が居るだけで癒された。


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