赤道直下
て・て・テレパシー
『あ゛ぁっ、数学の教科書忘れたし!ちょ、貸してくんない?』
俺は大きくため息をつき、気を集中させ、ただ"思った"。
―俺も次の授業、数学なんだけど。―
口には出していない。
ただ"思った"だけ。
『はぁ!?ふざけんなし!あたしチョー困ってんですけど!』
返事はすぐに帰ってきた。
俺は次の授業の準備、数学の教科書とノートを机に出した。
―いや、知らないし…。―
―他の奴に借りろよ。―
俺はまた"思った"。
『…え〜、だってメール打つのメンドいし〜。』
メンドいってお前なぁ…、と"思おう"としたが、すぐに次の"思い"が聞こえてきた。
『…それにさ、あんたともっとオハナシしたいしさ…。』
あぁ、もうまったく!
今のは"思わ"なかった。しかし、彼女には聞こえていたかもしれない。
俺は教科書を持ってたちあがった。
『あぁっ!ヤバいって!もう先公来たって!急いで!』
―…わーかった!今行くから!―
俺は教科書を持って教室を出た。
時々、俺が"思わ"なくても、彼女には伝わってしまうんじゃないかっておもう。
そんなわけないのに。
そんなわけないのに、さ。
でも、あいつならいいかなっておもってる。
悪いやつじゃないんだ。
「…ごめんね、わざわざありがと!…あ、これあげる!!」
教科書を持って微笑んだ彼女は飴玉を一つくれた。
「教科書忘れたときは言ってよ。次はあたしが貸してあげるからさ!」
<て・て・テレパシー>