あの窓の向こう側
「ごめん…梨乃…

俺がもっと早くあいつに言ってたら…

もう来るなって…説得できてたら…

梨乃は苦しまずに済んだんだ…

怖い思いせずに済んだんだ…

俺も…病気で入院してて…容態が急変することの

怖さとか…苦しさを知ってるのに…

ほんとに…ごめん…」

いつも明るくて、冗談ばかり言って

私達のことを楽しませてくれる爽汰君

その爽汰君がいつもの笑顔じゃなくて、

こんなに真剣な顔をしている。

こんな爽汰君…初めてだ…。

『いいの…。爽汰君が助けてくれたことに

変わりはないし。爽汰君…自分ばっかり

悪く言ってあの人のこと、全然悪く言わない。

ほんとに…優しいんだね…。』

そうにこっと笑顔を向ける私。

「…梨乃…!!」

ぎゅっと私の手を握る爽汰君。
< 105 / 117 >

この作品をシェア

pagetop