あの窓の向こう側

微妙な距離

翌日、私は体調がよくなったから病院内を歩いていた。

病室に居たら誰か訪ねてくるかもしれないから、歩き回ってた方が会う確率は低いかなって思ったんだ。今は誰とも話さず一人で考えて居たかった。

そんなことを考えながらふらふら歩いていると、ドンッと誰かにぶつかった。

「あっ。ごめんね。大丈夫？」

『い、いえ…私こそ、ごめんなさい。』

ふっと見上げるとそこには白衣姿の若い男の人が立っていた。その綺麗な顔立ちを見て、私はその人が誰なのかすぐに分かった。

今年からこの病院で勤務している有馬櫂斗（ありま かいと）先生だ。まだ25歳なのに医者としての腕があって、顔が良いから人気のある先生だ。ナースや女の患者さんがキャーキャー騒いでいるのを見たことがある。