あの窓の向こう側
どうしよう…。今沙羅さんに会うのはちょっと気まずいかも…。

私がドアの所で迷っていると、沙羅さんと波流君の話し声が聞こえてきて、私は思わず聞き耳をたててしまった。

「波流…もうすぐ退院やな。」

「せやな。」

「退院するってどう思っとる?」

「あ?何や急に。せやなー…退院して花火職人の見習いに戻れるのは嬉しいねんけどな…」

「そっか…。嬉しいけど…やっぱ寂しいゆうか、気になんねやろ?あの子のこと…」

「あの子?あの子って誰や?」

「梨乃ちゃんに決まってるやん。」

思いもよらず私の名前が出てどきっとした。

「…。梨乃か…。」

黙ってしまった波流君…。

「こんなこと言って良いんか分からんけど…波流は梨乃ちゃんが好きだと思っとん?」

えっ!?沙羅さん何を…

「…俺は…」

波流君が何か言いかけて私の緊急が高まった時だった。

「それは違うで!」
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