あの窓の向こう側
瑞希さんが亡くなってからは、波流君は自分を見失って廃人のようになっていたらしい。

「あの時ばかりは…うちらも幼なじみやからって…何て言ってええんか分からんかったわ。日に日に崩れて行く波流を目の当たりにしても、何もできんかった…。」

それはそうだろうな…。大切な人を失って…更に自分のせいでって自分を責め続けてるのだから…。

そんな誰もが手を差し伸べることができない状態の波流君を救ったのは、瑞希さんとの約束であり、花火だったらしい。

その年の夏に瑞希さんが言っていた思い出の花火大会があって、どうにか波流君を連れ出して、その花火を見せることに沙羅さんと潤さんは成功した。

その花火を見て、瑞希さんとのまた花火大会に行くという約束を思い出した波流君は、ただ立ち尽くして泣いていた。
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