(中篇)トライアングル〜貴方が居たから〜【完】
陣痛だとわかった。



「破水してる…」



警察官の人が手配した救急車に、担架に寝せられた琉聖と共に乗る。

腹部を撃たれてる琉聖は、意識がない。



「琉聖…琉聖…起きてよ…」



「腹部を撃たれ、意識不明の男性と、破水した34週の女性の受け入れをお願いします」



救急隊員の人の声が遠くに感じる。

すぐ近くに居るのに。



「…はぁ…はぁ…」



琉聖の手を握りながら、力むのを堪える。



「名前、言えますか?」



「高瀬、憂紀…」



「こちらの方は」



「黒川…琉聖……」



陣痛は間隔があると聞いてたけど、痛みは治まらない。
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