ライン


「羽田さん!」




阿部さんでさえ立ってられないのに

物が倒れてくるかもしれないのに


羽田さんは真っ先に部屋に向かう。

その顔は真剣な表情をしていた。



それから何分経ったんだろう。

テレビからは地震速報が流れ、震度4と言う事だけを伝えていた。

ようやく揺れも収まり、阿部さんがテーブルの上を片付け出す。

アタシは目の前に転がっていたプラスチック製の花瓶を手にし、重い身体を奮い立たせた。


どこに戻していいか分からず、対面キッチンのコーナーに花瓶を置く。

丁度、その斜めに部屋があり、開いたままの扉の向こうで

もっとも残酷な光景を晒していた。

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