ライン

扉の向こう側

覆い被さるように羽田さんが居て、その脇からは白いワンピースのような物が覗いていて

まるでスローモーションみたいに

羽田さんはそこから離れて、きつく抱きしめた後で、乱れた髪を優しく撫でて笑いかける


あんな顔、初めて見た。

アタシが大好きな大きい身体が包み込む

大好きな大きい手が触れる

大好きな笑顔を見てる


その相手は

紛れもなく石井さんだった。



どうして、あの人がここに居るの?






「どうした?」


「いえ…別に…」





アタシはまだ知らなかった。

これ以上の残酷な奥底に足を踏み入れてしまう事を…

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