色に香りに摩訶不思議



「あ……鞄の中にハサマ君のトランクス見つけたわ」

 ――くしゃみをしちゃった鴇田さん、その後は鼻声になるかなぁ~ってさ、少し心配したボクだったんだけど、その心配も何のその……

 鴇田倫子さんらしい、いつもの透き通る声に戻ってくれて安堵するボクだった。

「うわぁ……ハサマ君のトランクス……素敵」

「じゃあ、テイク1、行くよ」

「うん、いつでもOKよ」

 ――というわけで、やっとこさっとこ録音を始められたボクたちみたいな……

「うふふ、ハサマ君の素敵な匂いがするトランクス」

 ――ボクの後ろで生徒会長の上條さんがゴソゴソやっているみたいだけど……

 綺麗な発音と透き通る鴇田倫子さんの美声をオンマイクで聴いているボク、その心地好さに上條麗子さんへの注意は散漫になっていた。

 ――散漫になってるっていうか、気にもならないっていうか……

 ほぼ100%、ボクの意識は鴇田倫子さんの美声に酔いしれつつ引き込まれてしまっていて、いわゆる、周りが見えない状態になってしまっていたのだった。

「うふふ……制服のスカートにトランクスって、何だか面白い組み合わせかも」

「鴇田さん、鴇田さん、NGだよ」

「え? ハサマ君、どうして?」

「今さ、はひふへほのは行でね、鴇田さんは少しマイクを吹いてたからだよ」

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