色に香りに摩訶不思議



「もう、どうしてハサマ君は、いつもいつも?」

「はい? 上條さん、ボクが何か?」

 生徒会長の上條麗子さん、アナウンス担当の鴇田倫子さんへ一枚の紙を手渡しつつ、急に顔を真っ赤に紅潮させながら、
「ああ、心地好くて素敵……」
なんて、ボクの方へヨロヨロと近づいてきたのだった。

 ――う~わ! 上條さん、椅子に座っているボクの頭に顔を近づけちゃって……んで、目を瞑ってボクのツムジの辺りで深呼吸とかしちゃってるし!

 そんな生徒会長の姿を見た鴇田倫子さん、
「ホント、有り得ないくらいイイ匂いですよね」
と、ボクの背後に回り深呼吸をかましてくれている。

「ちょっと、あの……生徒会長? 放送依頼に来たんじゃないんですか?」

 ――頭から自分の匂いを嗅がれたり、背中から自分の匂いを嗅がれたり、ニッチもサッチも間抜けこの上ない状態から解放されたくて……

 ボクは生徒会長が持参したアナウンス原稿らしき用紙を鴇田倫子さんから奪いつつ、その用紙を生徒会長の眼前に突きつけたのだった。


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