kenka2

カランコロン…

石を転がし、暗い表情で歩く憂。
空を見上げると、歩道橋へと上る。
呉羽に行く通学途中だった。

脳裏に浮かんでいるのはもちろん利津。
見た目や声は同じでも、直先輩じゃない。
それが分かってても、会いたい気持ちが
止められない……

どうすれば良いんですか?先輩…

「…!」
転がしていた石が、こちらに飛んできた。
顔を上げて歩道橋の上で止まると、
見慣れた姿の少女がいた。

怪しげに微笑む少女。
それを見て、怒りが込みあげて来る憂。

「久しぶりだね」
それは、ナジカだった。

最後に会ったのは、1年前のあの日。

忘れる筈もない悪夢が訪れた日。
大好きだった、直が死んだ日。

「テメェ…!!」
激しい眼光でナジカを睨む憂。
そんな憂に全くビビらず、静かに
爪を噛むナジカ。爪が割れる。
< 30 / 113 >

この作品をシェア

pagetop