kenka2
奈央も波瑠も黙り込んだ。
何かを抱えていると確信し、奈央の
目を見て肩を掴む繭。

「仲間やろ…っ」
それを聞くと、決心をしたかのように
奈央も繭を見つめた。

「直さんの残したものは大きすぎて、
あたしも苦戦してるってことだ」
力なくそれだけ言うと、奈央は繭の腕を
離して、どこかへ消え去ってしまった。

「あの子から話す訳にはいきません。
…納得するかどうか分かりませんが、私が
説明しましょう…」
「宮崎は、探しているのです。
自分自身の、敵を…」
「…宮崎自身の敵?」
「直が死んだあと、彼女の病室から
手紙が見つかったんです。それは宮崎
へのメッセージでした」


”…頼りのない総長で許してくれ。お前に、
どうしても望みがあって…、叶えてほしいんだ。
高校時代に喧嘩して、勝てなかった相手が
いるんだ。あたしが死んだら、もう戦えなくなる…
だから、あたしの代わりに、そいつに勝って
くれねーか?お前なら出来る筈だ…あたし
なんかより、よほど強い女だからな”

自分が死ぬのが分かっていたかのように、
直は手紙を書いた。誰宛かは読んでみて、
すぐに玲が判断した。

玲はその人物を知っていた。
だからこそ、奈央に教えたのだ。

「そいつに宮崎は一度も勝っていない」
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