kenka2
『そんなわけない。いつも利津ばかりで、
何か気に入らないことがあると、決まって
いつもあたしを殴るし。親なんて嫌いだ』
『…』

異常なほどの子供への愛が、
逆に直を苦しめていた。頭が良い
利津は何も言われず、それはそれで
利津も不快感を抱いていた。

それでも直の前では弱音は吐けないと、
いつも彼女の相談相手になっていた。

『だから、決めたんだ。あたし』
『?』
直は涙をふき取り、立った。
ボクシングのように、拳をシュッと
前に突き出した。

驚いた顔で見る利津。
『勉強で認めてもらえないなら、
喧嘩で一番になる。誰にも負けない』

この発言には、当初利津はかなり
反対した。
親も激怒したが、それでも直は
自分の意見を貫き通した。たいした
やつだ、と利津は直を褒めた。

『なあ利津、練習相手になってくれ!』
『お前と違ってあたしは空手をやってたから、
強いぞ?』
『口だけなら何とでも言えるだろ』
『ムカッ』

喧嘩をして、笑って、直にとっては
それが楽しくて仕方無かった。いつの
間にか、彼女は呉羽の総長になっていた。
だが親はそれでも直も認める気には
なっていなかった。
< 46 / 113 >

この作品をシェア

pagetop