kenka2

『ごめんなさい…』
この瞬間、利津は親に呆れた。
怒りと悲しみが込み上げて来た。
拳を振り上げようとした時。

『り…つ…』
直の小さな声が、聞こえた。
『直…っ』
直の左手を握り、その小さな声を
聞き取ろうとする利津。両親も直の
声を聞いて、泣き声を抑えた。

『今まで、ありがとうな…
お前が居るから、生きてこれた…
今度は…あたしの代わりに生きて…』
『何言ってんだよ!お前は助かって、
これからもあたしと生きてくんだよ!
こんな所で諦めんな!お前は、真鍋直
だろ…っ!?』
『はは…無理だよ。もう分かるんだ…
自分の命が尽きようとしてること』
『もう喋るな…!!』
『お母さん…お父…さん』
両親は直に近付き、涙を流す。
直は震える手で利津の手を握り返す。


『すれ違いが多くて…大嫌いな両親
だったけど…今なら和解できる気がする…』
『私達は…ただ、あなたに立派な大人に
なってほしくて…ごめんなさい』
『認めてくれましたね…』
< 49 / 113 >

この作品をシェア

pagetop