kenka2
「うぉおッ」
波瑠の叫ぶ声が聞こえた。






「……」
お昼過ぎの裏庭には、薫が1人
座って考え事をしていた。
ユウのことだった。

「何で…」
確かに一番始めは、友達になる気など
無かった。ただ上に連れて行ってくれる
補助役だと思っていた。時がたつにつれ、
ユウの余裕そうな表情や性格を見ていると
安心するようになった。

自分に怯えずに接してくれる唯一の人間。
ずっと味方だと思っていたし、嫌われてる
なんて思っていなかった。

「…ちくしょ…!」
学校にも来ていない。
もっと私がしっかりしていれば。
どうすれば良いのか薫には分からなかった。
ただ時が過ぎて行くのを感じていた。

「大丈夫か?」
声が聞こえたので振り返ると、
そこには奈央が立っていた。
薫を見て隣に座るとパンを出して
食べ始める。そういえば、もう昼だ。

「大丈夫も何も、ねぇよ」
「隠しても無駄だ。ユウの事だろ」
「…」
「あいつがどういう奴か、お前も始め
から分かっていたんじゃないのか」

確かにユウは周りから距離を置かれて
いたし、常に不気味な感じはしていた。
信用は出来ないと誰もが言っていた。

「人は変われるんだ。私があいつを
変えてやる」
「…あたしも一年のときユウと喧嘩した
ことがある。喧嘩の腕は普通だったけど、
頭は良かったよ。精神をえぐられた事も
あるしな」
「悪気は無いんだ。癖になってるだけだ」
「そうだと良いな…」
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