kenka2
「そんなことより、お前も平気か?」
「悔しいけど、強くならなきゃ始まらない
話だろ。直さんの目指した呉羽を作るために、
あたしは強くなる。利津さんみたに、もっと…」
「宮崎…」

ー強いんだな。
そう思っても、口では言えなかった。
言ったら奈央の決心が揺らぐ気がした。
奈央はそっと薫を見て言った。

「あたしもな、躊躇っていたんだ。
過去に何かあるなら、決着をつけた方が
良い。直さんの事で落ち込んでるあたしが
言う台詞じゃないけどな…」
それだけ言うと、立って歩いて
行ってしまった。

「…ユウ」
風が、薫の髪を撫で回した。




「のり巻き、美味そう」
「あげねーよ?」
憂が繭の弁当を見て言った。
完全に獲物を狙う目だったため、
繭は弁当を隠しながら横目で憂を
見ている。そんな光景を見ながら、
ふっと笑う利津。

「!」
利津が笑った。
その事に対して繭と憂は驚く。
「笑った…」
「失礼だな、私も人間だ。笑うさ」
何だか直の面影を感じる。
つられて、笑顔になる2人。

「そういえば波瑠は休みなのか?
遅刻なら昼までには来ると思うんだが」
「何も連絡来てないです…」
「…そっか」
何だか胸騒ぎがした。
利津は自分の携帯を出して、波瑠の
電話番号を確認する。すぐに電話をかけた。
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