kenka2

ザアッ・・・

また風が吹いた。
しかし奈央は迷わず進んだ。
本人は気付かなかった。彼女の
後ろから彼女を見ていた存在。
直の墓に、ナジカが来たことを。

ナジカは直の墓につくと、
じっとその名前を見つめた。



家のベッドでねっころがる利津。
時計を見るともう12時を回っている。
ごろんと寝返りをすると、天井を
見上げてため息をついた。

「頭なんだ。あたしがケリをつけなきゃ
いけない。他の者は関係ない。それが、
あたしの罪なんだろ…直」

2段ベッドの下で寝る存在はもういない。
背筋が凍る空気の中で利津は目を閉じた。


次の日、プールが凍るほどの
寒さにガーディアンを着て
登校する薫。ーふう。
息を吐くと、白かった。

ふと脳裏にユウの顔が浮かぶ。

『わかってる。ユウはお前を
心配して言ってるんだよ』
彼女の言葉が懐かしい。

『ユウはお前が大嫌いだ』

ー大嫌いだ。大嫌いだ。
大嫌いだ…

胸に刺さるセリフも蘇る。
それでも薫はユウと和解したい。
あいつが人を信用できないのなら、
私があいつを変えてやりたい。
何でそう思うのかは自分でも分からない。

あいつが好き。それで理由は
十分だろう。

「ーユウ」
薫は静かに手を握り締めた。
白い息がまた見えた。
ピピピ…携帯が鳴った。
電話だった。

「?もしもし」
「…薫?」
「!」
その声は、今薫が一番
求めている”ユウ”の声だった。
大袈裟に大声を出す薫。

「お前…!」
「ごめんね…薫。薫と仲直り
したいんだ。あれから考えたんだ
けど、薫は大好きな友達だから…」
「…ユウ!」
「話したいんだけど、学校に行きづらいから
ーそうだなあ岸沼校の近くにある公園はどう?」
「分かった。今から行く!」


< 82 / 113 >

この作品をシェア

pagetop