kenka2

ふっ。
ユウは笑った。

「流石にそこまで言われたら、
もう猫被れないっすよね」
「もう、諦めろ」
ー呉羽に帰る道はない。
かと言って岸沼に味方もいない。
ここで終わりか…ユウの野望は

ユウはソッと目を閉じた。
すると薫の姿が脳裏に浮かんだ。
ー何を考えてるんだ…?
何でこんな時に、あいつの顔が…
今更助けてくれる筈もない。
助けてもらいたくもない。


「ユウ!!」
「!」
ユウは顔を上げた。
寧々も驚いて上を見た。
そこには、薫が立っていた。
傷はもう治り、体力も回復した
みたいだった。

「そいつは呉羽の人間だ。寄越せ」
「汚いドブネズミを、庇うのか?
お前もどうせ裏切られたんだろう」
ユウは自信なさげに会話を聞いていた。
すると薫は下に降りてきて、寧々を
一発殴った。

「呉羽のことは、呉羽でカタをつける。
他の奴等は黙ってろ!!」
「ー!!」

馬鹿か、コイツは。
こんなに酷い事をされてもまだ、
ユウを助けてくれる。
何がしたいんだ…教えてくれ。
お前はユウの何なんだ?

「お前の相手はあたしだ」
「宮崎…!!」
奈央も薫の横にたった。
寧々はニヤっと笑うと、奈央と共に
どこかへ消え去った。
怠慢するつもりなのだろう。

ユウは薫と二人きりになった。
薫はユウに近付き、肩を貸した。
「動けるか?」と言って。
「…お前」
ユウはすぐに薫の肩を外し、
一人で歩き始めた。

「お前と和解しようとは思わない」
強く薫を睨むと、薫もユウを強い
眼差しで見つめた。
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