kenka2
ふと薫と過ごした日々が頭に浮かぶ。
『何が言いたい?私と戦うか?』
『何言ってるんすか♪ユウはあんたを
潰したい訳じゃ無いっす。むしろ逆っす』
始めて出会ったとき、薫はユウを警戒して
仲間だと認めなかった。プライドが高い奴だ、
とユウは感じ、こいつを動かすのは難しいと
考えていた。
『私は頭が悪いんだ。頭脳的に分からない
事があったらお前が必要になる』
『…必要?』
次々と脳裏に浮かぶ思い出。
「やめろ…」
ユウはすぐに手をおろし、また殴った。
何発殴られても薫は抵抗する様子を
見せなかった。ユウは焦っていた。
ー何故わたしに反撃しない。
わたしを潰せ…!自分が最悪な奴
だって事くらいわたしが一番分かってる。
それでも上に行きたいんだよ…っ
譲れない想いがあるんだよ!!だれか…
わたしを助けて…裏切って、傷付けて…
こんなわたしを…認めないで…!!
「ユウを…」
突然ユウは殴るのをやめた。
薫は驚いてユウを見ると、彼女の
目から涙が溢れていた。
零れ落ちるソレは薫の頬に落ちた。
「なみだ…?」
ー薫。ごめんね。
自分でも分かっていた筈なんだ。
お前に必要と言われたとき、気持ちが
高ぶったことを。傍に居たいって…
思ってしまったことを。
直の話をしたのも、自分で驚いた。
人に過去を語ったことなんて無かった。
誰も信用出来なかったんだ…。
『やーねー。水くさいじゃないっすか』
自分が頂点になる為に、わたしは
また呉羽を裏切った。薫も、皆も巻き込んで。
しまいにはこのザマだ。信頼を失っただけで、
得たものなんて何も無い。