たった一人の君へ〜二人の運命〜
美幸の前で泣くこともまた初めてだった






「すみません、加奈と話があるんで席外してもらえますか?」


慎二くんがママに言う





ママは心配そうな顔をするわけでもなく、部屋を出ていった






それを見届けて、慎二くんが言った

「お前、京介と別れたんだろ?」





そうだ
あたし京介を失ったんだ
ボンヤリした意識が蘇る




「うん」



「加奈、それでこうなっちゃったの?」



美幸が抱きしめながら聞く





「…」






「加奈、お前さ何でも一人で抱え込むなよ
もうさ、吐きだせよ
俺も美幸もお前の味方だから」






あたしの味方
京介が言ってくれた言葉
京介だけが味方だった





京介

悲しみが戻ってくる






また美幸の胸で泣いた





< 239 / 362 >

この作品をシェア

pagetop