たった一人の君へ〜二人の運命〜
京介の手があたしの手の中でピクピクと動く




「加奈…泣かないで…」


消えそうな小さな声で京介はそう言った
話すたびに透明な酸素マスクが曇った





「…っく…っく…京介ぇ」
もう涙が止まらないよ






涙で滲んで、京介の顔がうまく見れない


それでもさっきまでの苦しい顔とは逆に唇が少し上がって優しく微笑んでいるように見えた

いつもどんな時でも見つめてくれていた京介のやさしい笑顔






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