たった一人の君へ〜二人の運命〜
「加奈…ごめんね」


小さくママの声がした





泣き続けるあたしを那奈が包んでくれた




そのぬくもりの中であたしはあの時の夢を思い出していた





―――――――
―――――
―――




加奈、泣かないの
お姉ちゃんでしょ?


ママの声?


隣で泣いているのは妹の那奈


遠い遠い幼い日の記憶


加奈は強い子ね
泣かないで偉いね


あたしは強い子?
そうなんだ
あたしは強い子なんだ


だから泣いちゃいけないんだ


ママ、私もう泣かないよ
だって私お姉ちゃんだもん


お姉ちゃんだもん





あの夢には続きがあったんだ

今うっすらと蘇る





偉いね加奈


ママ、加奈が大好きだよ






―――
―――――
――――――







ママ、あたし本当は愛されてたんだね、きっと





あたしの泣き声に混じって、ママの涙をすする音が聞こえた気がした





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