たった一人の君へ〜二人の運命〜
安堵の気持ちでリビングの戸を開けた



「お姉ちゃん、おはよ!」
眩しい那奈の笑顔に迎えられる
那奈もママも笑ってる
本当に助かったんだ





「加奈、社長さんに挨拶してちょうだい」





えっ?
社長さん?

ママのその視線で気付いた




リビングの、いつもパパが座るその場所に、知らないおじさんが笑いながら座っている




社長さん…
って言ったよね?
ということは、この人がママの愛人?
何でいるわけ?




初めてまともに顔を見た




少し白髪まじりの髪を綺麗に整え、グレーのスーツをビシッと着こなした男の人がいる

40代いや若く見えるだけで50代くらいなのかもしれない

パパよりも紳士な雰囲気の漂うおじさんは、社長さんという言葉があまり似合わない

社長さんというより、取締役とかそんな感じ




「こんにちは」

社長さんが挨拶をした





「どうも」





何であんたがいんのよ
しかも、いつもコソコソ寝室で事を済ましてるくせに、今日は堂々とリビングに座っちゃって、何様のつもり?
あんたは部外者でしょ?





安堵の気持ちが吹っ飛んだ




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