たった一人の君へ〜二人の運命〜

溶けた薔薇

丁度夏休みに入る頃、パパの自己破産が成立した



そして案の定、家を出ることになった




もうこの家に帰ることはないんだね




住み慣れた家を出るというのは、長年連れ添った友達と別れるような悲しい気持ちだった



家族の思い出なんて美しいものじゃないけど、それでも大切な居場所だった



ありがとね

白い壁にもたれかかり、別れを告げた








「社長さんが用意してくれたのよぉ」



ママが茶色い大きなマンションを見上げ嬉しそうに話す



新居は3LDKの立派なマンション
那奈とあたしの学校を考慮して、前の家からはわりと近い距離にあった





このマンションを手配したのも、敷金を払ったのも全部社長さん




アイツの手を借りないと生きていけない自分が悔しい



こんな家早く出たい

新居に足を踏み入れた途端に悔しさがにじみ出た





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