たった一人の君へ〜二人の運命〜
あんたに育てられた覚えはない




「あんたなんか母親じゃない」




「あっそ。ならあんたなんか子供じゃないわ。

あんたなんか産まなきゃよかった!」





産まなきゃ…よかった…
ずっと分かってたよ

ママの言う通り
あたしなんか産まなきゃよかったんだよ





あたしだって、生まれたくなんかなかった
ママの子供になんか生まれたくなかったよ





「産んでくれなんて頼んでない!」


ママをまた睨みつけた





「あっそ。そんなこと言う子は出ていけ!」



ママはバタンっとリビングの扉を閉めて行ってしまった





何よ
出て行ってやるわよ
こんなとこ
あたしはこの家の子じゃないんだからっ






携帯と財布を手に取り、家を飛び出した





あんなやつ
あんなやつ



走って走って走った



悔しい
悲しい



溢れる涙を拭って、暗い夜道を走った



向かう場所なんてない
でももう帰る場所もない




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