逆走マジック
「早く隠れろ」

小さい声で、よびかける葵。

影が理科室のドアを開ける。


―ガラ


開いたのはいいが顔が見えない。

暗いからだろう。

「みんな逃げるよ」


いっせーの、とカウントする。

佐月が最後の言葉を振ったのと同じに一斉に駆け出す。



*

「ちっ……」

二手に別れて逃げた。

怪しい影は、佐月と梓之を追いかけてくる。

「もうなんなんだろあいつ……っ」

ハアハア吐息をもらす梓之に慰めを入れる。

「やばい、あいつスピードあげてきた」

影はみるみる走るスピードがあがる。

陸上部の佐月はまだまだ余裕だが、音楽家の梓之には限界が来ていた。

「俺もう無理だから先行って?佐月一人なら逃げ切れるよ」

「だめだっ!私が守るって言ったんだからっ……」

会話を繰り返しているうちに、光がまた差し込む。

差し込んできずいた、影はもうすぐ後ろに居た。
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