天然な女の仔×クールで無口な男の仔の物語 〜前編〜

「あの、有紗さん!」

私はお腹の青あざを診察している有紗さんを呼んだ。

「どうしたの?もしかして痛かったかしら?(汗」

「あ、大丈夫です!あの、部長さんたちの具合はどうですか?」

「ウフフ元気よ。みんな密歌ちゃんのためにも早く入院したいって言っていたわ。」

「そうですか。部長さんたちにあまり無茶しないでくださいって伝えてください。」

「わかったわ。でも、あの仔たちきっと密歌ちゃんこそ無茶しないでって言うわよ。ウフフ」

有紗さんはニコッと笑った。

「そう言いそうですね。クス」

私も少し笑った。

「でも、密歌ちゃん…」

有紗さんが真面目な顔になった。

私も自然と真面目な顔になる。

「はい。」

「あの仔たちが言うことはわかるわ。密歌ちゃんはいつも自分で背負い、自分で追い込んで無茶をする…いつかはこんな傷で済まないんじゃないかとみんな心配してるわ。もちろん私もよ。無茶をしないでとは言わないわ。密歌ちゃんは千歳と同じで言うこと聞かないもんね。だけど、周りの人に少しでも頼りなさい。いつでもあなたが手を伸ばしてくれるの待っているわ。はい、診察完了よ。」

有紗さん…

「有紗さん…」

「ん?どうしたの?」

「さっき、目を覚ました時に湊にも同じこと言われました。あんなに真剣な顔で今にも泣きそうな湊を初めてみました。私は自分で何もかも自分で背負っている自覚なくてとにかくなんとかしないと思っていつも行動しているんです。湊をあんな顔にさせてやっているんじゃないんです。」

「そっかー。湊くんも同じこと言ったのね。多分、湊くんは怖かったのね。」

「え?怖い?」

「えぇ。密歌ちゃんがこのまま目を覚まさないんじゃないかと怖かったのよ。」

「そうだったんでしょうか…」

「私は湊くんじゃないから本当のことはわからないわ。でもね、湊くんはきっとあなたにはずっと傍で笑っていてほしいのよ。だから密歌ちゃんは、ずっと湊くんの傍で笑っていなさい。」

「はい…」

湊…

私は湊をあんな顔にはもうさせない。

あなたが望むなら、私はあなたの傍でずっと笑っているよ。

だから、湊…

もうあんな顔しないで…








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