レモン色
そんなことを考えていたら、私は止まっていたようだった。
「‥いじょ‥大丈夫?」
秀くんが肩を軽く揺らしながら呼んでいる。
「あっ‥ごめん、大丈夫」
私は笑って‥言ったけど涙が零れた。
「‥あれ‥なんでかな?」
分からない、なんで涙が出てくるの?
それに止まらない。

秀くんは人のいないところに私を連れて行ってくれた。
ただ何も言わずに傍にいた。
「‥ごめんね。行こう?」
私がそう言うとおしっと掛け声をかけて歩き始めた。

先生と比べると小さくて細い背中。
手も足も腰廻りも細い。
見上げる角度が小さくていい。
私の男性基準は‥先生。
大好きな先生。
先生のことを思って流した涙は、先生にばれたくない。
迷惑なんてかけたくないし、辛い思いもさせない。

そして私達は職員室に足を踏み入れた。
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