手の届く距離で
第1章.電話口の寝息
第1節.教室
「松田くんって1組の川上さんと付き合ってるんでしょぅ?」
「えっ?!」
急に話し掛けられて一瞬戸惑ったが
「あぁ…、そう…だよ」
「いつから付き合ってるの?」
「中学一緒なんでしょ?」
「・・・。」
この後ろから話し掛けて来たのは「水野」。
別にオレに興味がある訳では無いことは分かっていた。
「一緒の高校が決まってからかな。」
「ふ〜ん。そうなんだぁ…」
誰かに聞いたのだろう。
水野とは入学してこの一ヶ月、二人で話したことなんてほとんど無かった。
たまたま名字のマとミが近かったから席が前と後ろになっていた。
「いつも誰かとペチャクチャうるさい奴だな…」程度にしか思っていなかった。