手の届く距離で
こんな質問をして来るってことは、千恵に他に好きな人が出来てしまったのだろうな…。

覚悟を決めるしか無いと思い、千恵の次の言葉を待った。


「ホント?」
「ホントに好きな人出来たりして無いの?」


「だから居ないよ!」
「そう簡単に出来るかよ。」
「千恵が居るじゃん!」


こんなセリフも面と向かって言ったことは無かった。


「だって、学校で見る純くん楽しそうだし、私なんかいらないのかなぁって思って・・・」



「・・・。」



「私のこと彼女だって思ってくれて無いみたいだよ?」
「純くんから会おうとか言われたこと無いし、最初に付き合い出す時しか好きって言ってもらったことも無いよ。」


「・・・。」


自分でも気付いては居たが、ただ、感情表現がとにかく苦手なだけ…。


そんな自覚しか無かった。


それが、いつも明るい千恵に錯覚して、こんなにも千恵を傷付けていたなんて・・・。


「涙の理由はオレだ…。」


なんでこんな風に千恵を傷付けるまで気付かなかった?!


電話口で寝息を聞いて安心していたのはオレだけだった。
千恵の明るさに癒されてたのもオレだけ。


逆にオレは・・・?



千恵に「好き」と言うことさえ、ちゃんと伝えることが出来ていなかった。

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