手の届く距離で
「ジュン、今日アメ横付き合ってよ。」

帰り際にアツが話し掛けて来た。
ドラムのアツシは「バカ」だが気の合う、いつも一緒に居る男友達の一人だった。


「あれっ?今日部活休みなの?」


「ちょっと足捻っちゃってよぅ…。」


アツシはバスケ部だった。


オレもサッカー部の仮入部には行ったのだが、母子家庭で、部活にかかる費用を母親に出してもらう訳にも行かず、結局入部はしなかった。


居酒屋でのバイト、そして部活には入らずにバンドをやっているだけだった。


いわゆる早生まれってやつで、15才から居酒屋でバイトだったが、それなりに楽しんでやっていた。


「でも今日バイトだからバイトの時間までだったらいいよ。」


「ちょっと時計買うだけだからすぐだよ。」
「この間いい時計見つけたんだよね。」


高校からアメ横は目と鼻の先。

平日の昼間にしか行かないからいつも空いていた。

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