手の届く距離で
第8節.二人乗り
相変わらず自分から千恵を何かに誘うことはあまり無かった。
だが、会わない時間が長くなり、たまに1組の前を通ると楽しそうに居る千恵を見ると多少不安になる。
そう思い立つと決まって「今日一緒に帰ろう。」と突然誘いに言った。
でもいつも家の近くの公園で話し、千恵の家の前まで送り届けるだけ。
そんなことを繰り返していたのだが、
「いつもこんなんでいいのかなぁ…。」
誰に相談するわけでも無く、漠然と思い返していた。
今日はちょっと違う感じで誘ってみよう…。
「今日はちょっとなんか食べて帰ろうよ。」
土曜日だった。
「えっ!?珍しいじゃん!!どうしたの?(笑」
「別にどうもして無いよ…。」
「えっ?!だっていつもそんなこと言わないじゃん!?」
「いや、なんとなくだよ…。」
「まあいいけど。」
「どこ行くの?」
「なんか食べたいものある?」
「別に無いから決めて?(笑」
「じゃあ適当に行くわ…今日も電車で来てるんでしょ?」