手の届く距離で
「はい。ありがとうございます。突然すみませんでした。お大事にしてください。」


「じゃあね。ありがとね。」


「ああ、早く元気になれよ。」

中から千恵の声も聞こえた。


オレは後ずさりしていた。
そして、青木が出て来る前に石段を降り、塀の外側まで出た。


きっと千恵とお母さんには気付かれていない。


青木とは話したことも無かったのだが、
「気マズい!!・・・」


そう思いながら自転車にかけ乗り、その場を立ち去った。


「一秒でも早く!」この辺りから離れたかった・・・。


自転車をダッシュで漕ぎながら、角をいくつか曲がったところでふと、我に返ってスピードを落とした。


「ハァァァ〜〜・・・」
「あれはなんだったんだろうか・・・」


深く考える力も出ず、自転車を降り、押して歩き出した。


「このまま家にも帰りたく無いなぁ・・・」


ちょっとだけ千恵の家の方向に戻ることになるが、いつもの公園に行ってみることにした。


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