手の届く距離で
公園の入口に差し掛かると、もう千恵が待っていた。

「よっ!!」

いつもの男っぽく明るい挨拶がちょっと元気が無い様に感じた。


「ちょっと座って話そっか…。」


「ああいいよ。」

二人で公園のベンチに向かった。


「最近、クラスの人達と仲いいよね!」
「純くん、自分から友達とか作ろうとしないから、どうなることかと思ってたよ〜。」


いつもの様に明るく変わらない千恵だった。


「ああ、たまたまバンドやろうって話になってさ。」
「だからそのへんとね…。」


バンドを始めてみたことはちらっとだが、千恵にも言っていた。


「そっか〜。」
「もえちゃんとかはるかちゃんもメンバーなの?」


「あの辺はただの見学だよ。」


隠すつもりも全く無かった。
いつも周りに居たはるかにも、もえにも特別な感情は持っていなかったし、はるかには好きな人が、もえには彼氏がいた。



「いつもみんなで楽しそうでいいな〜って思って。」


いつもの通り明るく話していたが、どこか違う、千恵の態度に違和感を覚えた。


「千恵ははじめから1組のみんなと仲良かったじゃん!」
「この間なんか千恵、机の上に乗って騒いで無かった?(笑)」

「前からうらやましかったのはオレだよ…。」


事実、うらやましい様な感情は覚えていたが、うらやましいのはみんなと仲が良い千恵では無く、千恵とはしゃげる1組のみんなに対してだった。



「・・・違うよ…。」


「えっ!?」


千恵が急に下を向いて話しだし、オレは元々あまり無い言葉を更に失った。

千恵は立ち上がり、うつむき加減で周りを歩きながら話し始めた。


「私だって頑張ってるんだもん・・・。」



「えっ?なにが?」


言っている意味が分からなかった。


「私、みんなと仲良くするために頑張ってるんだよ…。」
「純くんみたいに静かにしてたら友達なんか出来るはず無いからさ!」
「私みたいなやつに…」


予想外の言葉だった。


「えっ?」
「千恵はいつもみんなと仲いいじゃん!」
「友達いっぱいいるよね!?」


< 9 / 53 >

この作品をシェア

pagetop