秋空
試合当日、空はあいかわらず曇っていたが、雨は降っていなかった。

朝、土曜日だというのに、早めに起きて父親の車に乗り込み、会場に向かった。

会場に着くと、だいたいの部員が集まっていた。

そしてあの三人も。

「おはようございます。」

部員たちの挨拶に迎えられて、僕は挨拶を返しながら三人に駆け寄っていく。

「おせーんだよ部長のクセに。」

いつも遅れて呼びに来るクセに、こうゆうときだけは早い。

「おはよう。愛花、ひろみ。ついでに慎也。」

後ろから[ついでかよ。]と聞こえたが聞こえないふりをする。

「おはよう。」

二人の挨拶で全員の挨拶を聞いた。

やっと部長だと言うことを自覚して目を開いて。

スケジュールを確認する。

「朝の練習時間はいつから。」


「8時30分から。」

「そうか、もうそろそろだな。」

(けっこうぎりぎりだったな。)

部員たちに申し訳なく思いながら、また訊く。

「先生は。」

「任せるって言ってたよ。」

我が部の顧問はあまり干渉せず生徒が運営する部活を目指しているとか言っているが、実際はさぼりたいだけだろうけど。

「じゃあ集合。」

みんなが駆け寄ってくる。

慎也は僕の左隣に。
愛花は右隣に。

ひろみはその間横に並ぶ。

「今日は新人戦だ、自分の試合に遅れたりしないように、放送には常に注意を払っておけよ。で、最終確認だけど、練習は8時30分からの30分しかないから、最近打てなかったぶん感覚を取り戻しておくこと。今日は実力を出し切れるようにがんばりましょう。」

「はい。」

全員の声が一つになる。

「じゃあそろそろ時間だから行こうか。」

ボールを打つのは久しぶりだった。本当になれるぐらいの時間しかなかった。

ボールを片付けて自分達の場所にラケットなどをおいてから開会式へ向かった。
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