秋空
かったるい開会式。

みんな聞いているようで聞いていない。

誰だかわからないオジサンの話など特段興味がない。

長い話が終わって、やっと解散の号令がかかった。

「なぁ祥、俺たちの出番はいつ。」

「僕と、お前と愛花とひろみはシードだから二回戦からで、まだ二時間ぐらいあるかな。」

「うぇーなげー」。

時間と言うものは、ぼーっとしているとすぎるのが速く感じた。

ついに僕の出番がきた。

最初の相手は名前も知らない奴だ。

「負けんなよ。」

コートに入ろうとしたら慎也が一応激励のつもりらしい言葉をかけた。

「まさか。」

僕は当たり前のように答えた。

県大会クラスでは有名な奴以外には負ける気がしなかったし、いままで負けたことがなかった。

[ゲームセット]

審判が試合終了のコールをかけた。

「ナイスゲーム。まぁ当たり前か。」

僕がコートを出ると真っ先に慎也が声をかけてきた。

確かに1ゲームも取られなかった。まさに圧勝だった。

「このまま愛花の試合でも見に行くか。」

僕が聞き返すと、

「わりぃ、俺はひろみの試合見に行くわ。」

その掛け合いのうちに僕は気ずいた。

「それよりおまえ試合はまだなのか。」

僕が訊くと、慎也は残念そうに

「相手が棄権で二回戦も免除だって、ついてねーなー。」

相手が逃げたのか、慎也が強運だったのか少し考えようとしたが、愛花の試合も、ひろみの試合も、僕と同じぐらいらいにに始まったから終わっているかもしれないと思って、さっさと話を切り上げて、僕は愛花の、慎也はひろみの応援場所に向かって走り出した。
< 18 / 88 >

この作品をシェア

pagetop