秋空
タッタッタッ

僕は小走りに人混みをかき分けて、愛花の元へ向かっている。

途中本部に寄って報告などをしていたが、ほぼ走りつづけている。

コートの周りには、内の学校の女子テニスの部員がコートを囲んでいた。

僕は恥ずかしさから、強引に割り込んでいくことができずに、人だかりの周りをウロウロしていた。

すると人だかりの中から声がした。

「祥、応援にきたの。」

独特の静かな声ってことはまさか。

「こっちに来たら。」

ひろみが声わかけてくれた。

他の部員より小さいので、出にくそうだったが、どうにかかき分けて人だかりから脱出した。

「あれ試合は終わったの。」

僕はまだ驚いていて声がうわずっているような気がした。

「相手が棄権で不戦勝です。」

ひろみを探している慎也が可哀想に思った。

全く慎也といいひろみといい、今日は二人にとって何かあるのかと言うぐらい強運(?)だ。

テニスは今日までに棄権届を出したら必ずあいた人のところに誰かを入れて試合できるようにする。

つまり、慎也とひろみの相手は今日開会式には元気だったが、そこから試合前までの間になにかしらの理由で出られなくなった事になる訳だ。

僕はそ強運(?)に驚きながらも、話を続ける。

「で、愛花の試合はどう。」

「少し手間取っていますが、後少しで勝つでしょう。早くこちらへどうぞ。」

ひろみに促されるまま僕は、少女のアーチをくぐるように、女子部員の視線に緊張したが、ひろみが作った道を進みやっとバックネットの前に到着した。

すぐにスコアボードを見ると、あと1ポイントで愛花の勝ちだった。

(少ししか観れなかったな。)

心でそう想いながら、ジッと愛花を見つめる。

愛花の腕がさっと振り上げられて、ボールはさらに高く上がる。

愛花はそのボールをジッと見据え、右手を前へ振るった。
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