秋空
僕とひろみは、愛花が試合結果を報告するのを待って一緒に控え場所に戻ると、慎也が座って待っていた。

「おーい、どこにいたんだよ。探しまくってもいなかったから戻ってきたのに、まさか試合がなかったなんて気づく訳ないじゃん。」

慎也が愚痴をたれる。

「それは慎也のミスであって俺たちが悪い訳じゃない。」

「別にいいことだしね。」

「そうです。別にいいことです。」

僕たちは冷めた言葉をかける。

「おいおい、そりゃねーよ。」

慎也が嘆いていると、放送が鳴り始める。

[No.1村雨慎也さんとNo.2狩野耕助さんは試合ですので本部まできてください。]

「よっしゃあ、やっと俺の番だ。今のうさばらしに、狩野っやつをボコボコにしてやる。」

変な気合いを漲らせ、慎也はずんずんと本部に向かって歩き出す。

冷たくされたのがそんなにいやだったのだろうか、顔つきは少し寂しげだ。

(ふー、手間のかかる奴だ。)

「おい慎也、応援するから、ソッコーで決めろよ。」

慎也が足を止める。

愛花たちも僕たちとの付き合いは短くないので、察してくれたみたいで、

「そうそう、がんばってきてよ。」

ここでとどめの一撃。

「負けないで。」

その一言に反応して体をこちらに向けて、少し大きめの声で叫ぶ。

「おう、任しとけ皆の衆。」

やったく正直な奴だ、応援されないとやる気がでないのだから。

笑顔で控え場所を後にする慎也を見てみんなそう思っただろう。
< 22 / 88 >

この作品をシェア

pagetop