秋空
今日はベスト16まで決まったら終わりなので、最終試合の二人はコート整備をしなければならない。

愛花は最終試合だったのでコート整備を任されていた。

僕がボールなどの跡片づけをしようとすると、

「おい、追いかけなくていいのかよ。」

慎也が僕の腕をつかんで訊いてくる。

「えっ何で、別に大丈夫そうだったじゃん。」

この僕の言葉に次はひろみが一言。

「まったく、鈍感にも程があります。」

慎也が強い口調で続ける。

「お前バカじゃねーの。あんなの強がりに決まってんじゃん。」

「強がりって・・・あいつは強いと思うんだけど。」

僕が反論するとすぐに答えが帰ってくる。

「それは、あなたが見たことがないからです。いえ、愛花が見せなかったと言った方が正しいでしょう。」

「じゃあ、ひろみは見たことがあるのか。」

ひろみの言葉に僕は思わず聞き返した。

同じことを繰り返すなんて子供みたいだ。

「私も慎也も見たことがあります。だからこそ愛花が強がっているかどうかがわかるのです。」

僕は腹が立っていた。

他の人ではなく自分にだ。

愛花を見ていたつもりでまったく見ずに自分で理想化していたのだ。

人よりは見てきたと思って天狗になっていた自分を責めた。

ひろみがさらに続ける。

「だから断言しましょう、愛花はあなたが思っているほど強い人ではありません。繊細な少女です。そしてもう一度聞きましょう、祥は愛花のところへ行かなく---」

僕は最後まで聞かないうちに、動き出していた。

今どんな顔をして、どんな言葉をかければいいかわからないけれど、僕はただ一言だけ心で叫んでいた。

(愛花ゴメン。)
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