秋空
新人戦ダー後編
僕たちは、来週の北信越大会に向けて練習を再開した。

しかし今日は雨、まぁ夏のように晴ればかりでない。

いつも通り校舎内をぐるぐる走り回る。

これもいつものことだが、僕と慎也の二人が飛び抜けている。

「あと一周。」

慎也が確認するように、僕の方向を向いて言う。

誰もいない校舎に慎也の声がこだましている。

他の部活の人たちは、たいがいトレーニングルームでダンベルやバーベルなどを使っているが、テニスは対して筋力が必要と言う訳ではない。

だから、誰もいない校舎をただひたすら走っている。

顧問の先生が緩いので室内の時は来ない奴らが多い。

今日は僕たちを入れずにたったの七人しかきていなかった。

「おーわり。フーきつー。」

慎也が走った感想を漏らす。

「じゃあ、帰ろうか。」

「おう。」

僕の呼びかけに答えて、慎也が歩き出す。

室内トレーニングの時は、メニューが終われば帰っていいのでいつも僕たちは早く帰れるのだ。

僕たちは階段を一段、一段登っていく。

さすがに走って登るほど元気は残っていない。

「やばっ、筆箱忘れた。慎也、教室よっていこうぜ。」

着替えが終わった矢先、カバンを見ると筆箱がないことに気がついた僕は慎也に問いかける。

「えー、しょうがねえな。」

慎也が行きたくないと思う気持ちも解る。

僕たちが使っているここは空き教室で本当は使ってはいけないが、人が来ないので、着替えにはちょうどよかった。

唯一不便な点は、僕たちの教室の対角線上にあるのでとても遠いことだ。

「悪い、今度なんかおごってやるよ。」

「よっしゃ。早く行こうぜ。」

そんな交換条件で納得してしまう慎也は、とても現金な奴だなぁといつも思う。
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