秋空
ほとんど機能していない足を強引に引きずりコートに入る。

今は大して痛くない。

つい数分前までコールドスプレーが無くなるまで冷やし、テーピングが何重にも巻いてある足は、ヒヤヒヤ、ガチガチ、ゴワゴワの嫌な感じがする。

「おい、わかってるとは思うけど、スプレーで冷やして感覚を無くし、テーピングで動かないようにしているけど、長くは持たないからいざとなったら棄権しろ。」

祥の警告が俺に浴びせられる。

「わかってる。けど、棄権はぜってーしねぇ。」

もう一度自らに気合いを入れる。

後ろから心配そうに見つめているだろう少女のためにも。

試合が始まる、サーブはこちらが先だ。

いつもなら俺が打っているが軸である左足を怪我しているので満足なボールを打つことができない。

そう言うわけで、

「今日は僕からサーブを打つ。」

の申し出に渋々従った。

祥からサーブが放たれて試合が動き出しているのに、僕には、ネットの前に立っていることしかできない。

なんだか悔しい気持ちになった。
< 43 / 88 >

この作品をシェア

pagetop